【令和4年12月21日】
あまり聞きなれない単語の「CBRNE災害」。このコロナ禍は、Biological災害と考えられます。災害特有のストレス「惨事ストレス」の対処法と共に、このコロナ禍を振り返ります。是非ご覧ください。
お疲れ様です。自衛隊卒セラピストの岡田凰里(おかだおうり)です。ブログを読んで頂いてありがとうございます。
今年も残すところあと10日ほどになりました。
買い物に行くと、お正月飾りが目に付くようになりました。
そろそろカウントダウンに入るころですね。
新型コロナウイルスについては、感染者がまた増加傾向にあります。
マスク、うがい、手洗いを継続して、健やかな年末年始を迎えましょう。
さて、今月のブログのテーマは
『コロナ禍を心理学で振り返る』
です。
前回のブログでは、医療従事者差別についてお伝えしました。
社会心理学的な観点から、「傍観者効果」という人間の特性をご説明しました。
人間があながうことが難しい、社会心理があるんでしたね。
そしてコロナ禍のような非常事態の時には、社会心理として「差別が必ず起きる」こともお伝えしました。
社会的に増幅された恐怖と不安によって、どうしてもそういうことが起こってしまいます。
ただそんな時には、「許して諭す」ことで恐怖と不安を和らげるメッセージを発信することが有効です。
そして、医療従事者の皆様に「ありがとう」と感謝の言葉を伝えて、頭を下げる。
これで、恐怖と不安が和らいで、生き抜く勇気が湧いてくるんでしたね。
こんな風にして、コロナ禍を乗り越えていきましょう。
ところでコロナ禍という非常事態。
「これって災害なの?」
と疑問に思っている方がいらっしゃると思います。
結論から申し上げると、
「災害ではない」
と、現在は取り扱っているようです。
ただ、医療・公安関係機関は、特殊な災害である「CBRNE(シーバーン)災害」として認識しているようです。
今回のブログでは、このCBRNE災害についてご説明します。
そして災害時に発生する特殊なストレス『惨事ストレス』について詳しく解説していきます。
今回のブログは以下の内容になっています。
1 コロナ禍は災害?
2 惨事ストレスとは
3 否定的な感情に惑わされない
4 不安を感謝に変える
5 まとめと次回のテーマ
それでは始めていきますね。
1 コロナ禍は災害?
こんな疑問を感じている方がいらっしゃると思います。
現に防衛大臣は、自衛隊に対して2020年3月28日に、水際対策強化のため、空港での検疫支援等の災害派遣を命令し、実施されています。
と感じるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れない部分があるようです。
災害の定義は「災害対策基本法」の、第一章第二条第一項に記載されています。
災 害
「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。」
と、定義されています。
具体的な災害が書かれていますが、この中には未知の感染症の流行という表記はありません。
ですので、基本的には災害ではないという認識になります。
実はわたし自身は「災害」という認識でいたので、当初の行政の動きには違和感を感じていました。
ただ、法律の定義にないのであれば、やむを得なかったのかもしれません。
政府自体もこの3年間、「災害」という定義に当てはめないで、各種施策を行っているようです。
こんな中で、医療や公安関係(警察・消防・自衛隊)の機関では、新型コロナウイルス感染症をCBRNE災害と認識しているようです。
CBRNE(シーバーン)とは
・化学 (Chemical)
・生物 (Biological)
・放射性物質 (Radiological)
・核 (Nuclear)
・爆発物 (Explosive)
の頭文字をとったものです。
これらによって発生した災害をCBRNE災害といいます。
実は自衛官にとっては、「CBRNE」はなじみのある単語です。
災害ではなく、相手からのCBRNE攻撃を防ぐための手段である「CBRNE防護」を習いますからね。
こんな服や
こんな感じ
こんな感じの服を着て、防護します。
上のカーキ色のゴム製の防護服は自衛隊のもので、わたしも着たことがありますが、通気性が皆無で動きづらい上に、重い・・・。
って、通気性がないのは当たり前ですね(^^;
あったら大変なことになっちゃいますからね(^.^;
夏場は本当に堪えます…。
汗でびっちゃびちゃです(^n^;
こんな感じて対処するCBRNE災害。
自然災害ももちろんそうですが、CBRNE災害に対処するのは、本当に骨が折れることです。
なぜなら、このような災害に遭遇した際には、”惨事ストレス”の影響があるからです。
2 惨事ストレスとは
惨事ストレスとは、Critical Incident Stress(非常事態ストレス)の意訳で、
「悲惨な事態を見た、聞いた、味わったときのストレス」
のことを言います。
東日本大震災以降、この言葉が広く用いられています。
惨事ストレスには、次の特徴があります。
・持続的で区切りがなく、身心に疲労が溜まり続ける。
・悲惨な状況に遭遇し、強烈なショックを受ける。
・先き行きが見えず、否定的な感情が増大する。
この3年間を思い返していただければ、上の3つの特徴に思い当たる節がたくさんあると思います。
流行当初は、先行きが見えず"不安"という、否定的な感情が増大したと思います。
それと共に、身体的にも精神的にも、何とも言えない疲労感に襲われたと思います。
そしてコロナにかかり、たくさんの方が亡くなるというショッキングな状況に直面しました。
日本国民はもちろん、世界中の方々が惨事ストレスの影響を受けることになりました。
この惨事ストレスの影響により、自粛警察が発生したり、差別偏見が発生したり、デマやフェイクニュースが発生しました。
このような状況に対処していくのが、惨事ストレス対処になります。
この対処を誤ると、普段の何でもないコミュニケーションですら、円滑に進まなくなります。
ストレス対処やコミュニケーション要領のようなメンタルヘルス対策は、普段の生活では後回しになりがちなものです。
しかし非常事態においては、これが真逆になります。
惨事ストレスに対処し、心のつながりを持って円滑にコミュニケーションをとることが、安心感を生んで災害の復旧を促進します。
そこで惨事ストレス対処のポイントを、お伝えしていこうと思います。
3 否定的な感情に惑わされない
具体的な対処法をお伝えする前に、"災害"がどのような特徴を持っているか、ご紹介したいと思います。
実は自然災害とCBRNE災害では、その特徴が異なります。
次の表は、自然災害と原発災害の特徴を比較したものになります(※2)
表にある"原発災害"の部分は、CBRNE災害と置き換えても差し支えないと考えられます。
特筆すべき違いは
「災害の時間的特徴」
「被災者へのスティグマ※」
「心理的回復の方向性」
です。(※スティグマ:差別や偏見などの否定的な扱い)
CBRNE災害の厄介なところは、
・反復的に被害があったり、
〔⇒コロナは第8波を迎えています〕
・被災者へのスティグマが発生したり、
〔⇒医療従事者や感染者への差別がありました〕
・心理的な回復が、物理的な復興と乖離することです。
〔⇒コロナ禍では物理的被害はほとんどありませんでした〕
同じ災害でも、自然災害とCBRNE災害には違いがありますので、それにあった対処が必要になります。
このような違いがある中で、自然災害とCBRNE災害に共通した部分もあります。
それは、
『復興に時間がかかる』
ということです。
この時間がかかるという特性が、人間の心に否定的な感情を生みます。
いつになったら元の生活に…
災害のせいで人生が台無しだ…
なんで自分がこんな目に…
このような否定的な感情が、どうしても沸いてしまいます。
このような事に対処するのが、「惨事ストレス対処」です。
そして対処のポイントは
『否定的な感情に惑わされない』
ことです。
それでは、否定的な感情に惑わされないための方法をお伝えしますね。
4 不安を感謝に変える
否定的な感情に惑わされないためには、その根底にある感情の正体を、はっきりさせておく必要があります。
否定的な感情の根底にあるもの…。
それは不安です。
この不安のために、様々な否定的な感情が沸いてきます。
そして思いもよらないタイミングで、思いもよらない感情を抱いてしまうこともあります。
その具体的なシーンは、前回のブログでご紹介しました。
さらにその感情を抱いてしまったことに対する、
罪悪感…
自責感…
罪責感…
こんな感情に襲われたりします。
被災時にこれらの感情が起こるのを、回避することは不可能です。
不可避であるがゆえに、その対処法を知っておかなければなりません。
日本は災害大国です。
われわれ日本人がその対処法を知らないのは、日常生活を送る上で非常にリスクが高いと感じています。
このブログで具体的な方法をすべて説明することはできませんが、すぐにできる方法を1つお伝えします。
それは「感謝すること」です。
自身が被災した際に、
"手助けしてくれる方"
"復興活動をされている方"
そして、
"今まで何事もなく過ぎていた日常"
こんな風にすることで不安は和らいで、否定的な感情は起こりにくくなります。
そして、暖かい気持ちに包まれます。
前回のブログで、感謝のメッセージをお伝えしましたが、CBRNE災害にとどまらず自然災害の時にも、「感謝する」という方法は有効です。
コロナ禍は第8波。
まだもう少し、気の抜けない状況が続きそうです。
感染対策をしながら、お仕事をされている皆様
治療に対応して頂いている、医療従事者の皆様
そして、何事もなく過ぎていく日常
これらに感謝をしながら、この禍が収まるまで、淡々と感染対策を続けていきましょう。
5 まとめと次回のテーマ
今回のブログでは、CBRNE災害と惨事ストレスについてお伝えしました。
自然災害とCBRNE災害の違いと共通する特徴をご紹介し、そしてそれに伴って発生する"惨事ストレス"についてお伝えしました。
惨事ストレスの影響下では、様々な否定的感情に襲われますが、その根底には"不安"という感情がありました。
この不安に対処する1つの方法として、「感謝すること」をご紹介しました。
ただ災害は、この方法1つで乗り越えられるほど、甘いものではありません。
災害大国の日本で生活する上で、災害に対する準備は欠かせません。
まずは物の準備が必要です。
物がないと、生き抜くこと自体ができません。
ただ、災害後も人生は続きます。
その際に心の準備がないと、災害時の経験がその後の人生に大きな禍根を残します。
災害後も人生を心地よく送るためには、事前に「心構え」をしておく必要があります。
ただ「心構え」は、まだほとんど注目されていません。
わたしは自衛隊式で心構えをする方法を、セミナー形式で提供しています。
ブログの最後にHPのリンクを貼っておきますので、是非一度ご覧ください。
この一年の締めくくりに、災害の「心構え」について、ご承知いただければ幸いです。
新型コロナウイルス感染症、第8波のピークはまだ見えてきません。
感染対策の基本のキを継続し、不安を感謝に変えて、この波も乗り越えていきましょう。
次回のブログでは、先日の見学に赴いた「国立ハンセン病資料館」についてお伝えします。
是非ご覧ください。
【災害の心構えのセミナー】
【参考文献】
1 心理臨床大辞典〔改訂版〕 氏原寛等共著 培風館 2013年9月
2 福島原発事故がもたらしたもの —被災地のメンタルヘルスに何が起きているのか— 前田正治編著 誠信書房 2018年6月
3 コロナ禍における医療・介護従事者への心のケア 前田正治編著 誠信書房 2021年12月
【参考資料】
4 内閣府HP「災害対策基本法」
5 e-GOV法令検索 「災害対策基本法」
6 ウィキペディアHP 「災害対策基本法」
7 「自衛隊による新型コロナウイルス感染症への対応 ― 自衛隊の災害派遣等における活動と今後の課題 ―」 水間 紘史(外交防衛委員会調査室)
8 福島県医師会報第80巻第9号(30.9) 視点「CBRNE災害」
【今週の体重】
先週58.7㎏⇒今週59.2㎏
【体重をアップする理由】
【頑張らないダイエット③】 お手軽にも程がある!"超時短"筋トレ法
※令和6年3月15日:ブログの冒頭に「概要」を追加し、内容を校正しました。
陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。公認心理師。産業カウンセラー。
在職時は、年200件以上の面談に対応するカウンセラーの任務を行うと共に、隊員に対して「災害派遣の心構え」を教育をしていました。
そんな自衛隊での教育や、自身の災害派遣の経験をアレンジして、現在は一般向けに「災害の心構え」をお伝えするセミナー講師。
『どんな災害も乗り越える』
その心構えを”自衛隊式”でレクチャーしています。
このブログでは、防災のこと、身心の健康、そしてちょっとだけ自衛隊の話を綴っています。
自衛隊での経験やセラピストとして学んだことが、皆様のお役に立てば幸いです。
ブログの更新は毎週水曜日。
月に一度、ブログテーマのアナウンスをしています。
アナウンスをご希望の方は、ご連絡ください。
【連絡先はこちら】
LINE公式アカウント:https://lin.ee/ky0Ngjp
Mail:sukkirioasis@gmail.com
【読者になりたい方はこちら】
最後までご覧いただきありがとうございました。感謝です。
引き続き感染対策をして、安心安全の社会を作っていきましょう。
【前回のブログ】
【ホームページ】
https://www.sukkirioasis.com/
【公式Twitter】
『身体の健康・心の健康・防災』のニュースをツイートしています。
https://twitter.com/sukkirioasis
⇨フォローして、是非情報を受け取ってくださいね。
【経歴・資格など】
リラクゼーションセラピスト、公認心理師(国家資格)、産業カウンセラー、元陸上自衛官、レンジャー隊員、上級体育指導官、予備自衛官(衛生官)