お疲れ様です。自衛隊卒セラピストの岡田凰里(おかだおうり)です。ブログを読んで頂いてありがとうございます。
2月に入りました。
東京ではここ数日、本当に寒い朝が続いています。
毎日寒さで目が覚めています(^^;
まさに2月という感じですね。
COVID-19については、オミクロン株が猛威を振るっています。
緊急事態宣言を出す、出さないというような議論もニュースでよく拝見するようになりました。
注意していても感染する状況です。
もうさすがに・・・、と誰もが感じるところではありますが、うがい・手洗い・マスクをして、感染対策を継続していきましょう。
さて、今月は「自己肯定感」をテーマにお伝えしたいと思います。
このテーマにするにあたって、対象者を限定します。
今月のブログは自分の自己肯定感について悩んでいる、困っているという方を対象にします。
それ以外の方は、大変恐縮ではございますがご遠慮ください。
日ごろネットニュースを拝見していると、たびたび「自己肯定感を高めるには」「自己肯定感が低い方におススメの・・・」というようなコラムが目に入ります。
わたしは公認心理師でもありますが、心理の勉強をしていると、この「自己肯定感」というフレーズをよく目にします。
ただ、この自己肯定感の説明を何度見ても・・・
「?」
と感じるばかりで、何回読んでもしっくりきません。
そこで自己肯定感について、一般論を交えて、わたしの感じるところをお伝えしていこうと思います。
今回のブログではオススメの本を紹介しながら、自己肯定感について深めていこうと思います。
その本は『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました。』です。
なぜこの本がおススメかというと、「自己否定感」という言葉が使われているからです。
あくまで私見ですが、自己肯定感が低いことがツラさの原因ではなく、「自己否定感」があることに問題があると、常々感じていたからです。
そんな時に、偶然この本に出合いました。
ちょっと前置きが、長くなってしまいましたね。
そろそろ本文を、始めていきたいと思います。
今回のブログは、以下の内容になっています。
1 自己肯定感の定義
2 本当に自己肯定感が低いのか
3 自己肯定感という表現の疑問
4 『自己否定感』を育むもの
5 まとめと次回のテーマ
1 自己肯定感の定義
今は便利な時代なので、インターネットで検索すれば簡単に出てきますよね。
出てきます。
出てくるんですが・・・。
え?
定義が確立されてない(>m<)!!
定義、確立されてないの?っと、あっけにとられました。
提唱したのは立命館大学名誉教授で京都教育センター代表の、高垣忠一郎先生です。
ただ、ウィキペディアで検索すると、様々な方が様々な定義を提案しています。
例をいくつか挙げると、
「自分自身のあり方を肯定する気持ちであり、自分のことを好きである気持ち。」
(高垣忠一郎)
「現在の自分を自分であると認める感覚。(下位概念:諦観・帰属・独立の3つの概念により構成されると仮定)※諦観ー受容/帰属ー所属意識/独立ー自立」
(樋口善之・松浦賢長)
「自分自身のあり方を概して肯定する気持ち。(理想自己と現実自己のずれをうまく調節しながら、ありのままの自己を受け入れるという自己受容性とは区別する)」
(久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸)
というような感じです。
まだまだたくさんありました。
1つ1つしっかり読むと、なんだか頭が痛くなります(-_-;
そのほかにもweblioで検索すると、
「自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する語。 自己否定の感情と対をなす感情とされる。」
となっています。
その他、論文の抄録(※1)を拝見しても、やはり様々な研究者が、様々な定義を提案していると書いてあります。
一般人の感覚からしたら、提唱者の定義でいいんじゃないかと思うんですが(^^;
「自分自身のあり方を肯定する気持ちであり、自分のことを好きである気持ち。」
(高垣忠一郎)
わかりやすいですよね。
これでいいと思うんですが・・・。
確かに学術的な表現かと言われれば、そうではない感じがしますが。
この表現では納得のいかない方が、たくさんいらっしゃるんでしょう。
せっかくわかりやすい言葉で、定義してくれているのに・・・とわたしは感じてしまいます。
それではなぜ、定義が確立すらされていない言葉が、話題になるんでしょうか。
それには外国と日本を比較した、こんなデータがあるからのようです。
2 本当に自己肯定感が低いのか
淑徳大学助教の吉森丹衣子先生の論文抄録(※1)を拝見すると、
「日本青年研究所の調査によると、日本の高校生は米国・中国・韓国に比べて自己評価が低いことが示されている。」
とあります。
「わたしは他の人に劣らず、価値のある人間である」
「全体としてみれば、私は自分に満足している」
これらの質問に対する回答として、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答する割合が、日本は明らかに低い。
反対に
「自分はダメな人間だと思うことがある」
という質問項目に対して「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答する率は、諸外国に比べて高い傾向にある。
ということだそうです。
このアンケートの調査項目には
「どちらともいえない」
という項目がありません。
「そう思う」
「どちらかといえばそう思う」
「どちらかと言えばそう思わない」
「そう思わない」
という4つの項目でアンケートが取られています。
肯定か否定のどちらかに、データを傾かせるようにしてあります。
とても恣意的なアンケートだと思います。
このアンケートの結果がきっかけで、教育現場では「自己肯定感を上げなくては!」となったようです。
・・・。
ちょっと待ってください。
諸外国って、アメリカと中国と韓国ですよね!?
その3か国と比べて自己評価が低かったら、ダメなんですか?
その他、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンとの比較もあるようですが・・・。
そもそも日本には「謙遜」という文化がありますよね!?
そりゃ、日本の自己肯定感が低く出るに決まってますよね?!
日本人は自分について語るとき、謙遜して「自分はまだまだです。もっと頑張ります」っていう国民性ですよね。
日本ほど謙遜する国が、その3か国とヨーロッパにありますか?
そんな文化的な背景を考慮しないで、日本人は自己肯定感が低いから、上げようというのは、ちょっと乱暴すぎると思うんです。
「謙遜」という文化は、日本では美徳とされている文化です。
なぜ外国と比べて、自分の国の美徳とされている文化を否定するんでしょうか。
アメリカ・中国・韓国の高校生の自己肯定感が、日本より高くても、それはそれでいいと思います。
そういう文化なんでしょう。
ただ、ここは日本です。
なぜ他国の文化を、強要するようなことをしているんでしょうか。
日本は日本、外国は外国です。
わたしはわたし、あなたはあなたなんです。
あなたの基準を押し付けられても、困るだけだと思います。。。
それでも自治体では、自己肯定感を高めるための、様々な教育がされているようです。
わたしの時代には、そんな教育はありませんでした。
教育現場で行われているということは、きっと自己肯定感が低いということで、お悩みの方がいらっしゃるんだと思います。
ただ、その悩みは自己肯定感が低いことが「真の問題ではない」、とわたしは感じています。
3 自己肯定感という表現の疑問
自己肯定感の生みの親、高垣先生の講義の抄録(※2)を拝見すると、先生は「自分が自分であって大丈夫」という感覚を、自己肯定感と呼んでいるそうです。
高名な先生の考えに、意見するようで大変恐縮ですが、若輩者のたわごととして、受け取っていただければと思います。
この「自分が自分であって大丈夫」という感覚は、自己肯定感と表現するのが適切なんでしょうか?
これは「自己安心感」ではないでしょうか。
自分が自分であって大丈夫、と感じると得られるのは安心です。
ですから、肯定感の問題ではなく、安心感の問題だと思います。
先生の講義の抄録には「不安」という言葉が、たくさんでできます。
それと同時に「自己否定」という言葉も、たくさんでてきます。
この抄録を通読すると、自己肯定感が低いのではなく、自己不安感が強い、自己否定感が強い方がいらっしゃると読み取れます。
そして、そのことで悩んでる方がいらっしゃる。
そう読み取れます。
ですので、本当に必要なのは自己肯定感を上げることではなく、自己不安感、自己否定感を和らげていくことが必要だと感じます。
わたしは前職の自衛隊で、カウンセラーの任務についていましたが、自己肯定感という言葉に対して、いつも違和感を感じていました。
そして臨床の中で、不安感や否定感を解消することで、自然と安心感が得られて、「自分は自分であって大丈夫」という感覚になることを目の当たりにしていました。
そんな経験から、自己肯定感ではなく、自己否定感に問題があると感じていました。
先生の抄録を呼んだ限りは、先生ご自身も自己否定感や自己不安感が問題であることを認識されています。
それを表現するのに「自己肯定感が低いことが問題である」という表現にされたんだと思います。
自己肯定感が低いのが問題であると、それを上げなければならない、となるのも自然な流れです。
しかし、自己肯定感が低いと指摘された方は、どう感じるでしょうか。
そのように指摘されたり、自身でそう感じている方は、皆さんすごく頑張っているんです。
そんなことを指摘される前から、とっても頑張っているんです。
その人たちに、自己肯定感を上げようと伝えても・・・。
「あなたの感じ方がおかしいから、自己肯定感が低いんです。」
「あなたが悪いんです。」
「あなたが原因なんです。」
「もっと頑張って、感じ方を変えなさい」
「だから頑張り方を教えてあげます。」
こういうメッセージになります。
そんなこと言われなくても、ずっと前から頑張っているんです。
でも、人間はそんなにずっと、頑張れないんです。
いったい、どこまで頑張ればいいんですか?
結局、「自己肯定感を上げよう」と伝えることは、相手を否定し、追い詰めるメッセージを送っているのと同じことなんです。
ですからわたしは、自己肯定感を上げるというのは、本末転倒であると感じていました。
そして自己肯定感を上げるのではなく、自己否定感を解消することが大切だと考えていました。
そんな中で、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました。』という本に出合いました。
自己肯定感という言葉を掲げている本はいくらでもありましたが、「自己否定感」という言葉を使っている本は、初めて出合いました。
そこで早速この本を、拝読しました。
4 自己否定感を育むもの
この本は、咲セリ(さき せり)さんと、その旦那さんの咲生和臣(さきゅう かずとみ)さんの共著です。
奥さんの咲セリさんが、自己否定感に苛まれる人生を、旦那さんと二人三脚で歩んでいく姿が、赤裸々に語られています。
咲さんは、強迫性障害、不安障害、双極性障害、境界性パーソナリティー障害と、様々な診断を受けているそうです。
そんな中でも、旦那さんはしっかりと寄り添って、生活を送っています。
わたしが衝撃だったのは、この状況でも咲セリさんは、働いてらっしゃるということです。
わたしが同じ立場だったとしたら、恐らく働くことはできないと感じます。
彼女にとっては、働いて社会とのつながりがあることが、自己否定感を和らげる有効な手段だったのかもしれません。
そしてもちろん病気を克服するために、薬物治療や心理療法、様々なセラピーを受けていらっしゃいます。
本当に、涙ぐましいばかりの努力です。
仮にこの方に
「あなたは自己肯定感が低いから、上げていこうね。」
なんて言えるでしょうか。
そんな言葉は残酷すぎます。
自己否定感で押しつぶされて、もがいてもがいて苦しんで。
安心感を得ようと、頑張って頑張って。
自己肯定感を上げるどころの話ではないはずです。
そしてなぜ、彼女がこんなにも自己否定感を持ってしまったのか。
本に書かれていますが、彼女は親御さんに小さいころから、否定的な言葉や感情を、ずっとぶつけられてきたそうです。
具体的な内容は、是非本をご覧になっていただきたいのですが、本当にお辛かったろうなと思います。
そして今もまだ、苦しんでらっしゃる。
そうです。
自己否定感がある方には、否定的な言葉や、否定的な感情をぶつけ続けている人間が、必ず身近にいるんです。
これが自己否定感の原因です。
つまり、自己否定感や自己不安感があるのは、本人の責任ではないんです。
これはわたしのカウンセラーとして、臨床を経験したり、本などを拝読した中での結論です。
しかし「自己肯定感が低い」という表現を使ってしまうと、先述したように、まるで本人に問題があるかのようなメッセージになってしまいます。
これでは本人が苦しむのも、無理はありません。
ですので、自己肯定感という言葉に苦しんでいる方に、まずやってほしいことが2つあります。
・自分に自己否定感がないか
・自分に対して否定的な言葉・感情をぶつけてくる人間が身近にいないか
この2つを確認してみて下さい。
5 まとめと次回のテーマ
今回のブログでは、自己肯定感という言葉の問題についてお伝えしました。
今回お伝えしたかったのは、以下の3点です。
●その本質は自己肯定感が低いのではなく、自己否定感や自己不安感があること
●そして「自己肯定感が低い」という表現は、責任を本人に押し付けるメッセージになること
●自己肯定感を上げるのではなく、自己否定感を解消することが大切であること
これはあくまで私見です。
そしてわたしごときが高名な先生の提唱について、異を唱えるような形になってしまいました。
もしかしたら不愉快になる方も、いらっしゃるかもしれません。
そのような方がいらっしゃったら、本当に申し訳ありません。
ただその一方で、「自己肯定感」という言葉にとらわれて、「自分が悪いんだ」と感じている方もいらっしゃいます。
そのせいで、心地いい生活が送れない方がいらっしゃいます。
あなたは悪くありません。
否定的な言葉や感情を、ぶつけてくる人が悪いんです。
あなたの責任ではありません。
今回のブログは、こんな風に自分を責めてしまっている方のために書きました。
自己肯定感が気になっている方の心が、少しでも軽くなることを願っています。
そして、今回ご紹介した本は読みやすくて共感できることも多いと思いますので、是非読んでみて下さいね。
わたしは図書館で借りましたが、かなり待ちました。
すぐに読みたいという方は、ご購入いただいてもいいかもしれません。
『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました。 妻と夫、この世界を生きてゆく』
楽天BOOKS
次回のブログでは、あなたに向けられた、否定的な言葉や感情に潜んでいるものの正体について、お伝えしたいと思います。
是非ご覧ください。
陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。
在職時は、年200件以上を対応するカウンセラーの任務の傍ら、気内臓療法(チネイザン)のインストラクターを務め、様々なボディケアを約10年間学んできました。
現在は自衛隊を卒業して、身体も心も癒すセラピスト。
『何をしてもよく眠れない』
こんな悩みをお持ちの方に、心地よい眠りをサポートする施術
「Windship treatment®」を提供しています。
このブログでは、身体の健康、心の健康、防災、そしてちょっとだけ自衛隊の話を綴っています。
セラピストとして学んだことや自衛隊での経験が、皆様のお役に立てば幸いです。
ブログの更新は毎週水曜日。
月に一度、ブログテーマのアナウンスをしています。
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最後までご覧いただきありがとうございました。感謝です。
引き続き感染対策をして、安心安全の社会を作っていきましょう。
【参考文献】
1 「大学生の自己肯定感における対人関係の影響 (PDF) 」 『国際経営・文化研究/Cross-cultural business and cultural studies』21(1)179-188頁 吉森丹衣子 淑徳大学国際コミュニケーション学会、2016年
2 「〔退職記念最終講義〕 私の心理臨床実践と「自己肯定感」」 立命館産業社会論集(PDF) 第45巻 (第1号) 高垣忠一郎 (2009年)
3 「「死にたい」の根っこには自己否定感がありました。」咲セリ/咲生和臣著 京都ミネルヴァ書房 2021年
【参考資料】
・ ウィキペディアHP 「自己肯定感」
・ weblioHP 「自己肯定感」
・ 財団法人 日本青年研究所HP
・ 独立行政法人 国立青少年教育振興機構HP
【前回のブログ】sukkirioasis.hatenablog.com
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