【令和6年5月22日】
「災害派遣で活躍したくて入隊しました!」素晴らしい心構えです。 ただ、その気持ちだけで自衛官を続けるのは、案外難しいかもしれません。そんな自衛隊の現実をお伝えします。是非ご覧ください。
お疲れ様です。
自衛隊卒のセラピストの岡田 凰里(おかだ おうり)です。
ブログを読んで下さって、ありがとうございます。
五月も下旬に入りました。
気持ちいい陽気が続いていますね。
ただ、今年も暑くなるそうなので、そろそろ熱中症にも注意しておいた方がいいかもしれません。
前回のブログでは、
「お金がないけど大学に行きたい」
という高校生のために、任期制自衛官についてお伝えしました。
『お金が貯めやすい』
『退職後も超割高でアルバイト』
『一生ものの出会いと経験』
こんなメリットについて、ご紹介しました。
お金に困っていて進学したい高校生、そしてその保護者の方は必見です。
前回のブログも是非ご覧ください。
このブログの最後にリンクがあります。
さて、今回のブログでは、自衛隊の現実についてお伝えしようと思います。
自衛隊に入ってくる新隊員で、
「災害派遣に行きたい!」
とか、
「戦車を操縦したい!」
などの、決まった希望をもって入隊してくる隊員がいます。
『自衛隊でやりたいことがある!』
この気持ちは、とても大切なことですし、自衛隊にとってもありがたいことだと思います。
ただ、そのやりたいことが本当にできるかどうかは、本人の努力や、本来持っている能力、その場の状況に寄ったりします。
そんな自衛隊の現実をお伝えします。
なお、今回のブログもわたしの所属していた、陸上自衛隊の経験を主にお伝えしますが、海自や空自においても大体おんなじだと思います。
ですので、自衛官になって働きいていきたいという方は、是非一度ご覧ください。
ブログは以下の内容です。
1 努力なしでは認められない
2 やりたいことはわかるけど…
3 災害は頻繁に起きない
4 国民の負託に応える
5 まとめと次回のテーマ
それでは始めていきますね。
1 努力なしでは認められない
どんな仕事をしてもおんなじですが、努力しないと決して認められることはありません。
それはもちろん、自衛隊も同じです。
職種や勤務地は、新隊員教育隊の成績によって決まります。
「普通科に行きたいです!」
「○○駐屯地で勤務したいです!」
そんな希望をするわけですが、その希望は成績順で決まります。
学科試験、体力検定、射撃検定等々、、、。
試験や検定で成績が決まっていきます。
特に自衛隊の場合、「検定」と名前の付くものには必ず合格しなければなりません。
ただ、これは本人の努力でどうにかなるものです。
もちろん、得手不得手はありますが、合格できないものではありません。
ここで努力を怠ってしまうと、自分の希望を叶えることは難しいでしょう。
さらに言うと、そのときどきの事情で、希望が叶わないこともあります。
わたしは、自分が第1希望した職種には行けませんでした。
第1希望の職種にはどうしても行きたかったんで、結構頑張ったんですよね(^^;
ただ、その時に言われたのは、
「成績や適性には問題ないんだけど、○○という事情があって行かせてやれない。申し訳ない。」
そんな風に言われました。
その話を聞いてわたしは、
「それじゃ仕方ない。縁がなかったんだな。」
こんな風にその話を受け入れました。
そこから班長から色々話を聞いて、最終的には第3希望の職種に決めました。
ただ、勤務地の希望は叶えてもらいました。
そして、陸上自衛隊に15年勤務して振り返ってみると、第1希望の職種に行かなくてよかったと思います。
さらに言えば、第2希望にも行かなくてよかったです。
班長に「お前には第3希望が合っている」と、言ってもらったんです。
新隊員の身分では、やっぱり各職種の特性はわかりませんから。
班長の仰る通り、第3希望の職種が、自分には合っていました。
縁って、こういうものなんだと思います。
希望を叶えるためには、必ず努力が必要です。
そして、良い成績をとることが必要です。
でも、努力して良い成績をとっても、自分の希望が叶わないこともあります。
ただ、頑張った結果得られた縁は、意外と良縁だったりします。
それを受け入れる気持ちも、大切かもしれません。
もし、新隊員教育隊でよい成績を修めたいと思うのであれば、事前に体力をつけておくといいでしょう。
体力は、事前に準備ができます。
・腕立て伏せ
・腹筋
・3000ⅿ走。
この3種目です。
やれば誰でもできるようになります。
この体力のアドバンテージがあるだけで、かなり違いますよ。
自衛官は、体力が資本ですから!
2 やりたいことはわかるけど…
新隊員の方で、特定のやりたいことを決めて入隊してくる隊員がいます。
それはとってもありがたいことで、嬉しいことなんですが…。
成績が良くても、必ずそのやりたいことができるとは限りません。
入隊した時に適性検査というものがあります。
これはどんな職種に向いているか、判別するものです。
自分がやりたいことと、自分に向いていることが違う場合もあるんです。
その適性を無視してまで、自分の希望を通してしまうと…。
それは本人にとっても、部隊にとっても不幸な結果となってしまいます。
適性検査は、統計学を使って科学的に信頼できる方法で作成されています。
ですので、適性検査の結果は受け入れた方がいいでしょう。
もちろん統計なので、
「自分は外れ値なので、適性関係ありません!」
なんてことも、あるかもしれません。
ただ、そんなことはほとんどありません。
無理に希望を通した責任は、自分だけでは取れないのが組織です。
自分自身を受け入れる機会を、逃さないでくださいね。
そしてもう一つ。
自衛隊は危険な任務を行うので、身体的な問題でどうしても希望が叶わない場合があります。
男性であれば誰もが一度は憧れる、第1空挺団。
「精鋭無比」と言われる、自衛隊唯一のパラシュート部隊です。
もちろん体力がないと希望できないのは当たり前なんですが、空挺隊員選抜身体検査があります。
この身体検査に合格しないと、空挺団には所属できないんです。
わたしの同期や先輩で、体力的には全く問題はなかったのに、身体検査で不合格になり空挺団に行けなかった方がいます。
その理由は、「色弱」と「分離症」です。
色弱の場合には、降下する際のランプの色の判別ができないなどの問題が発生します。
そして分離症の場合には、パラシュート降下後の着地で、腰椎に深刻な障害が起きてしまうなどの問題が発生します。
危険な任務ですので、こういった問題を発生させるわけにはいかないんです。
ですので、どれだけ体力的に問題がなくても、希望が叶うことはありません。
もし、第1空挺団を希望している場合には、身体検査の内容をご覧になってみて下さい。
このブログの最後に、空挺身体検査の内容のリンクをつけておきます。
3 災害は頻繁に起きない
「わたしも災害派遣に行って、その時の恩返しをしたい」
こんな志を持って入隊してくる隊員がいます。
わたしはそんな志を持っていたわけではないので、とても尊敬します。
ただ、災害派遣で直接住民の方を救助するのは、限られた隊員なんです。
その隊員が活動するための、バックアップをする隊員が大勢います。
メディアで放送されるような、
「被災者を助ける自衛官」
こういう風になりたいのであれば、基本的には普通科を希望してください。
普通科の隊員であれば、その機会は他の職種に比べて多くなります。
ただ…
災害は、そんなに起きないんです(^^;
そして、テレビで放映されないような、いわゆる地味な災害派遣もあります。
わたしの先輩で、一度も災害派遣の現地に出向くことなく、定年退官された方がいます。
もちろん後方支援では携わっていますが、一度も現地に行くことがなく退官する隊員もいるんです。
部隊に着隊して、しばらく仕事をしてみて、
「イメージと違う」
そんな風に感じてしまう隊員もいたりします。
中には一度退職して、もう一度自分の希望の職種に行けるように、新隊員教育隊からやり直す隊員もいます。
お気持ちはわかるんですが…。
災害派遣はほんの一部。
その任務の大部分を占めるのが、
「国民の負託に応えること」
なんです。
4 国民の負託に応える
自衛隊に入隊したあと、必ず「服務の宣誓」を行います。
気をつけの姿勢で、声を出して読み上げて宣誓します。
その内容は以下の通りです。
『私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、
日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、
常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、
政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、
事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、
もつて国民の負託にこたえることを誓います』
(※参考資料2から抜粋、文字装飾は筆者)
これが服務の宣誓の内容です。
この宣誓を常に意識して仕事をしているとは言いませんが、自衛官の仕事は
「我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」
この部分が表していると思います。
つまり、
「一般の方ができない危険なこと、たとえ命懸けになったとしても、それを仕事としてやります」
こんな風に、わたしは捉えています。
間違えを犯すと、命に係わるような訓練や任務が、当たり前のようにあるんです。
だからこそ自衛隊では、安全管理の意識がものすごく高いです。
国がピンチの時に、一番危険なところに行くのは、だいたいの場合は自衛隊です。
そういう装備を持っているからこそ、その任務が付与されます。
そしてその任務は、絶対に断れません。
断ったら、他にやる人がいないんです。
それが自衛隊の仕事です。
そして、そんな任務をやり遂げるための使命感は、自衛隊に入ったあとの教育や先輩からの教えで培っていくものです。
ですので、任務や使命は「与えられるもの」という感じです。
もちろん、入隊前に自衛隊でやりたいことを決めて入っているのは、いいことだと思います。
ただそれは、与えられる任務や使命を果たすための手段です。
国民の負託に応えるという大前提があって、その上で、その手段が自分のやりたいこととマッチしているというのが理想的なんだと思います。
自衛隊に15年勤務してみて、「自分のやりたいこと=仕事内容」にしている方は、そんなに多いわけではありません。
もちろん、いないわけではないんですが…(^^;
それよりも、大多数の方は
「自分に合っていること」
これを仕事にしていると感じます。
与えられる任務や使命の中で、自分に合っていることで国民の負託に応える。
そんな感じでやっていますし、わたし自身もそうでした。
自衛隊に入ってみて、自分のやりたいことができないと感じたり、イメージと違ったりすることもあると思います。
もちろん部隊内での配置転換や転属を希望して、やりたいことが叶う場合もあるでしょう。
ただどうやっても、自分のやりたいことが叶わない場合もあります。
こうなると、どうしても「退職」の二文字が頭にちらつきます。
そんな時には、「自分に合っていること」を自衛隊の中で探してみて下さい。
先輩に聞けば、必ず相談に乗ってくれます。
そして何年か勤務してみないと、自分に合っていることがわからない場合もあります。
わたしの場合は、自分に何が合っているかわかったのは、大体7~8年目くらいです(^^;
また、階級が上がると仕事の幅も広がります。
仕事の幅が広がれば、自分に合っている任務が見つけやすくなります。
15年の自衛隊生活を振り返ってみて、そんな風に感じます。
そして、改めて国民の負託に応えてきた、その15年の道のりを振り返ってみると…。
なんだか、あったかい気持ちになりますよ(^^)
5 まとめと来月のテーマ
今回のブログでは、自衛隊の現実と「与えられる使命」についてお伝えしました。
任務はもちろん、「使命」も国から与えられるもの。
それを果たすための手段が、自分のやりたいこととマッチすれば、これほど嬉しいことはありません。
ただ、そうするためには、努力が必要だったり、努力だけではどうにもならないことがあることもお伝えしました。
そしてもし、自分の希望がかなわなかった時には、自分に「合っていること」を探してみて下さい。
自衛隊の任務には、様々なものがあります。
きっと、あなたに合う任務が見つかるはずですよ。
同僚や先輩に相談してみて下さいね。
――――――――――
以下、来月のブログテーマのご案内です。
来月のテーマは
『The Way of ”奥駆道”』
です。
新年の抱負のブログでお伝えした、奥駆道(おくがけみち)の完走という目標。
そのために、わたしが取り組んでいることをお伝えしようと思います。
想定距離170kmを完走するための、トレーニングや食事についてご紹介できればと思います。
是非ご覧ください。
【一般向けセミナー開催します!】
~【どんな災害も乗り越える】その心構えを『自衛隊式で』お伝えします~
開催日:令和6年6月13日(木)
詳しくはコチラ⇩
【参考資料】
1 陸上自衛隊航空機乗組員及び空挺隊員選抜身体検査規則(PDF)
陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。公認心理師。産業カウンセラー。
在職時は、年200件以上の面談に対応するカウンセラーの任務を行うと共に、隊員に対して「災害派遣の心構え」を教育をしていました。
そんな自衛隊での教育や、自身の災害派遣の経験をアレンジして、現在は一般向けに「災害の心構え」をお伝えするセミナー講師。
『どんな災害も乗り越える』
その心構えを”自衛隊式”でレクチャーしています。
このブログでは、防災のこと、身心の健康、そしてちょっとだけ自衛隊の話を綴っています。
自衛隊での経験やセラピストとして学んだことが、皆様のお役に立てば幸いです。
ブログの更新は毎週水曜日。
月に一度、ブログテーマのアナウンスをしています。
アナウンスをご希望の方は、ご連絡ください。
【連絡先はこちら】
LINE公式アカウント:https://lin.ee/ky0Ngjp
Mail:sukkirioasis@gmail.com
【読者になりたい方はこちら】
最後までご覧いただきありがとうございました。感謝です。
【公式X(エックス)】
『身体の健康・心の健康・防災』のニュースをポストしています。
https://twitter.com/sukkirioasis
⇨フォローして、是非情報を受け取ってくださいね。
【経歴・資格など】
公認心理師(国家資格)、産業カウンセラー、リラクゼーションセラピスト(2級)、元陸上自衛官、レンジャー隊員、上級体育指導官、予備自衛官(衛生官)
〔※「Windship」及び「Windship treatment」は登録商標です。〕
【前回のブログ】