【令和6年9月21日】
日帰りで登れる標高3000ⅿ級の山「御嶽山」。そんなお手軽な山で起きた噴火災害。実際に登山して確認した御嶽山の今と、噴火を機になされた防災対策についてお伝えします。是非ご覧ください。
お疲れ様です。
自衛隊卒のセラピストの岡田 凰里(おかだ おうり)です。
ブログを読んで下さって、ありがとうございます。
9月も中旬を過ぎました。
東京ではまだまだ暑い日が続いています。
ただ、朝晩はだいぶ暑さが落ち着きました。
今月2回目の3連休は雨模様で残念ですが、暑くないのは助かりますね。
秋はもうちょっとかもしれません。
さて、今月は防災月間です。
それに合わせて10年前の9月27日に発災した
『平成26年御嶽山噴火災害』
をテーマにしています。
前回のブログでは、救助の拠点となった王滝村役場でインタビューをして、感じたことをお伝えしました。
御嶽山の頂上まで登れるようになったのは、去年です。
10年間この災害と向き合ってきた村役場の皆様に、感謝を捧げたいと思います。
ありがとうございます。
そして、現地に行ったからこそ感じ取れたことをお伝えしています。
前回のブログも是非ご覧ください。
さて、本文に入る前に、まずはこちらの動画をご覧いただきたいんです。
いかがでしたでしょうか。
噴火直後の御嶽山の状況は、確認できたと思います。
そして前回のブログでもお伝えした通り、警察・消防・自衛隊が、組織の垣根を越えて連携して救助していたのも、ご確認いただけたと思います。
あれから10年。
今回のブログでは、実際に登山をして確認した「噴火から10年後の御嶽山」についてお伝えします。
ブログは以下の内容です。
1 20都道府県に亘る犠牲者
2 御嶽山登山道の今
3 噴石への防災対策
4 登山者の安全対策について
(1) わたしの登山装備
(2) 登山届の義務化
(3) ヘルメットの着用について
5 まとめと次回のテーマ
1 20都道府県に亘る犠牲者
わたしは災害の現地取材をする際は、必ず慰霊碑を訪ねるようにしています。
今回の取材でも、もちろん訪ねました。
慰霊碑は村の市街地から少し離れた、松原スポーツ公園にあります。
【松原スポーツ公園】
被災当時は、この公園に警察・消防・自衛隊の車両を止めたり、宿営地として天幕が張られたりしていました。
川を渡って公園に入るんですが、当時の川は火山灰で灰色になっていたのを覚えています。
10年後の今は、灰色の景色はありませんでした。
川を渡り、公園に入ります。
公園の奥の方に、慰霊碑があります。
晴れていると慰霊碑の向こう側に、御嶽山が望めるんですが、この日は曇っていた見えませんでした。
犠牲者の皆様がお住まいだった都道府県を拝見すると…。
北海道、埼玉、東京、千葉、神奈川、山梨、静岡、長野、愛知、岐阜、石川、三重、京都、大阪、奈良、兵庫、岡山、広島、愛媛、大分
実に20都道府県にわたります。
御嶽山がどれだけ人気の山だったか、よくわかります。
秋の行楽日和に起きた、この噴火災害。
そう思うと、とても遣る瀬無い気持ちになります。
ご冥福を心からお祈り申し上げます。
そして、未だに5名の行方不明の方がいらっしゃいますが、遺族会は今年の捜索を断念したそうです。
10年経って、手掛かりを見つけるのが難しいためだそうです。
断腸の思いだとは思いますが、実際に登ってみると納得せざるを得ません。
現在の御嶽山には、噴火当時の面影は一切ありませんでした。
2 御嶽山登山道の今
それでは、今の御嶽山登山道の状況をご案内します。
まずお伝えしたいのは、災害から10年経った御嶽山ですが、安心して登山することができます。
わたしは普段登山はしませんが、様々な対策がなされていることが事前にわかりましたので、災害に対する不安はありませんでした。
ただ、3000m級の山に登るのは初めてだったので、高山病だけはちょっと不安だったんですが…(^^;
ちゃんと頂上まで登ることができました(^^)
それでは登山道をご案内しますね。
王滝村のバス停から田の原口まで公共バスで上がりました。
田の原口はこちらです。
【田の原口】
王滝頂上まで、一気に登りました。
道を譲ってくださった皆様、ありがとうございました。
【王滝頂上】
王滝頂上までの道のり、噴火災害の爪痕は全く感じませんでした。
楽しく登山できます。
王滝頂上山荘をあとにして、最高点の剣が峰まで向かいます。
ここからは、噴火当時の写真と比較しながらお伝えしたいと思います。
火山灰と雪が混じった状況なんだと思います。
そして、今の御嶽山の剣が峰がこちらです。
無事に剣が峰まで、登山することができました。
わたしの足で、王滝頂上山荘から剣が峰まで30分弱でした。
そして、剣が峰にも噴火災害の慰霊碑がありました。
ちなみにこちらが剣が峰の場所です。
【剣が峰】
いかがでしたでしょうか。
このブログの冒頭の動画や当時の写真と比較すると、今の登山道はその面影は全くありません。
これが今の登山道です。
険しい道ではありましたが、登山道がしっかり整備されており、迷うことなく登れました。
ちなみになんですが…。
この険しい登山道を、担架で田の原口まで被災者を運んだこともあったそうです。
写真をご覧いただければ、その大変さは想像に難くないと思います。
実際に登ってみて、この険しさを体感すると、救助に携わった警察・消防・自衛隊の皆様には、本当に頭が下がるばかりです。
次に噴石への対策を見ていきましょう。
3 噴石への防災対策
YouTubeで「御嶽山噴火」と検索すると、噴火直後の様子の動画がヒットします。
噴火当時その場にいて、とっさに撮影されたんだと思います。
今のわたし達にとっては、その映像は大変貴重な資料になります。
ただ、噴火災害に遭遇した際の対処としては、おススメできない行動です。
このような噴火に遭遇した際、一番大切なのは
「伏せること」
です。
そして、可能であれば岩陰に隠れて伏せることです。
実はこれは、陸上自衛官であれば、感覚的に理解できることです。
なぜなら榴弾(砲弾)への対処行動と似ているからです。
敵の大砲から飛んでくる砲弾は色々ありますが、その中に「榴弾(りゅうだん)」という弾があります。
手榴弾(しゅりゅうだん)は手で投げて、弾が破裂した破片でダメージを与える弾ですよね。
それを大砲でとばすバージョンが「榴弾」です。
この榴弾が飛来した際に、歩兵が立ちっぱなしでいると80%の人員が被害を受けます。
伏せていると、被害は20%未満になります。
そして、塹壕などに身をひそめると、被害はゼロに近くなります。
ですので、陸上自衛官は砲弾の音が聞こえたら、
「砲弾!」
と叫んで、伏せるように訓練しています。
もちろん実物は経験したことはありませんが、模擬式の火薬を使って訓練します。
わたしも実際にやっていました。
噴火の噴石に対しても、この榴弾への対処行動が準用できると考えられます。
ただ、もちろん山に塹壕なんてありません(^^;
そんな時には、シェルターに避難してください。
この噴火を機に、御嶽山にはシェルターが設置されています。
もし仮に、あのような噴火に遭遇した際には、近くにシェルターがあれば、とにかく急いで避難するようにしてください。
そして、山小屋の屋根や壁も「アラミド繊維」で補強されています。
アラミド繊維は高い強度と衝撃吸収性、耐久性をもっている高機能繊維織物で、防弾チョッキやタイヤの補強材などにも使用されているものです。
パッと見は、普通の山小屋に見えますが、実はこのような補強がなされているんです。
近くに山小屋があれば、迷わず山小屋に避難してください。
それと登山をして、シェルターを拝見して思ったんですが…。
3000mの標高付近で、このようなシェルターの設置作業を行ってくださった皆様に、感謝を捧げたいと思います。
資材はもちろんヘリで運んだそうなんですが…。
ヘリパイの方はもちろん、現場で作業をする方々がいらっしゃったからこそ、このような対策がなされているわけです。
お陰様で安心して登山ができました。
ありがとうございます。
それでは次は、登山者の安全対策についてお伝えしたいと思います。
4 登山者の安全対策について
登山者の安全対策について何ですが…。
なによりまず、わたしの今回の登山装備からご紹介しようと思います(^^;
こちらが今回のわたしの登山装備です。
これにプラスして、
「借りたヘルメット」
「クリーム玄米ブラウン×1袋」
「レモン塩飴×1袋」
「ペットボトル水500㎖×1本」
になります。
服装はトレランスタイルです。
水の量は合計約1リットル。
下山した後には、500㎖のペットボトルの1/3程度の水が残っていました。
持参の水筒の水は満タンのままです。
総重量は恐らく3㎏程度だと思います。
少し細かく装備を見ていきましょう。
リュックはトレイルランニング用なので、登山リュックではありません。
登山をした日は真夏の8月でしたが、曇っていたので頂上は寒かったです!
剣が峰で撮影のために30分くらいいたんですが、着用しました。
ポンチョ兼ハーフテント(ツェルト)です。
万が一遭難した時のために、テントにもなるポンチョを購入しています。
黒いロープは純正のもの、白いロープはわたしが追加したものです。
ロープは汎用性が高いので、あって困るものではありません。
地図とコンパスは、トレランの際には低い山に行くときにでも、必ず持っていくようにしています。
今は国土地理院のウェブサイトから、簡単に登山地図が手に入ります。
A3サイズで印刷して、持っていきました。
あ、それと写真には入れ忘れましたが、テーピングと熊鈴も必ず持っていきます。
わたしはソロで行動するので、テーピングがあれば捻挫しても行動することができるからです。
そして、熊に遭遇してしまうことを避けるためには、熊鈴は必須です。
そしてサバイバルシートは・・・、
レンジャー訓練のサバイバルキットに入れていたものを、未だに使っています(^^;
「R岡田」
⇩
「レンジャー岡田」のことです(^n^;
いやぁ…、見るたんびに様々な思いが交錯します(^o^;
はっきり言いますが、今回の装備は3000ⅿの登山をする上では、かなり軽装です。
ただ、田の原口の標高は2000ⅿ。
登るのは1000ⅿです。
田の原口から剣が峰の往復コースの標準タイムは5時間半から6時間です。
わたしは3時間程度で往復しています。
今の体力と経験、そして御嶽山の登山道の特性を考慮して、この装備にしました。
事前に地図判読をして、ウェブページで登山道を調べた上で判断しています。
そして、荒天の際は登山をすぐにやめるつもりでした。
登山をするための体力、そしてスピードを出しても落石を起こさないような技術を持って登山に臨んでいます。
レンジャー訓練を経て、陸上自衛隊で訓練をして、体育学校で運動生理学を学んで、今もトレーニングを続けている。
その上での装備ですので、ご了承ください。
この装備で大丈夫、とお伝えしているわけではありません。
ご自身の体力と、登山経験に合わせて装備を選んでくださいね。
御嶽山を登るためには、登山届の提出が義務になっています。
今はオンラインで届け出をすることができます。
わたしは事前にオンラインで提出しました。
また、田の原口を利用する際は、「やまテラス」という施設がありますので、そこで提出することができます。
長野県のウェブサイトで、 対象山域と代表的な山岳が確認できます。
このブログの最後にリンクを貼りつけておきますので、登山予定の方は確認してみて下さい。
御嶽登山道を進んでいくと、王滝登山口の看板があります。
その看板の横に、登山の心構えの看板があります。
そして、この看板の横にこのような看板があります。
ヘルメットの着用は、義務ではありません。
あくまで「奨励」になります。
登山をする前に、奨励山域になっていることはわかっていたので、登山用品店にヘルメットを選びに行ったんですが…(^^;
結構高いんですよね(^n^;
だいたい1万円前後。
軽い加工のものだと、1万5千円クラスのものもありました。
持っていくか本当に迷ったんですが、運よく借りることができたのでヘルメットを被って登山をしました。
ただ…。
あくまでわたしの肌感ですが、着用している方は登山者の1割程度でした。
自転車のヘルメット着用の努力義務と、同じような感じだと思います。
わたしはトレイルランニングはしますが、基本的には登山をしません。
トレランは里山を駆け抜けるスポーツで、頂上を目指すものではありません。
高山の登山の現状は良く知らなかったので、念のためヘルメットして登りました。
ただ、実際にかぶっている方は、ちらほらという感じでした。
そして、御嶽山は山岳信仰の山なので、修行の一環で登山されている方もいました。
その方々も、基本的には伝統的なスタイルで登山していました。
このイラストの様な感じですね。
一般登山者が帽子をかぶって登山しているのと、同じような感覚だと思います。
そんな中で、一組だけ白装束にヘルメットという方とすれ違いました。
これがヘルメット着用の実情です。
わたしは
「ヘルメットをしてください」
と言える立場ではありませんし、言うつもりもありません。
東京で自転車に乗る際、ヘルメットなんてしてませんから(^^;
ただ、ヘルメットを着用することで、万が一の時の生存率が上がることは間違いありません。
もしヘルメットの購入はちょっと…という場合には、田の原口にある「さとテラス」でレンタルのヘルメットがあります。
金額は令和6年8月の時点では2000円でした。
レンタルを利用するのも、ひとつの手だと思います。
着用するかどうかは、ご自身で判断して決めていただければと思います。
ちなみに着用奨励山域は長野県のウェブサイトに一覧がありますので、リンクを貼りつけておきますね。
5 まとめと次回のテーマ
今回のブログでは、御嶽山の今と、噴火後に施された防災対策についてお伝えしました。
噴火後に設置された防災シェルター
補強された山小屋
登山者の義務
そして見えない部分ではありますが、火山の監視体制も整えられ、火山に関する法律も整備されています。
今の御嶽山は、さまざまな対策がなされて、安全に登山できると思います。
登山をご検討の方は、是非是非行ってみて下さい。
噴火前と変わらない登山が、楽しめると思いますよ。
ただこのような対策は、噴火災害の被災者の犠牲のもと施されていること、頭の片隅でいいので留めておいていただければと思います。
最後に様々な対策を検討し、施してくださった皆様に感謝を捧げます。
お陰様で無事に登山することができました。
心から感謝いたします。
ありがとうございます。
次回のブログでは、気軽に火山について学べる研修施設
「やまテラス」と「さとテラス」
についてお伝えします。
是非ご覧ください。
【参考文献】
【参考資料】
1 長野県HP
3 NHKウェブサイト
陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。公認心理師。産業カウンセラー。
在職時は、年200件以上の面談に対応するカウンセラーの任務を行うと共に、隊員に対して「災害派遣の心構え」を教育をしていました。
そんな自衛隊での教育や、自身の災害派遣の経験をアレンジして、現在は一般向けに「災害の心構え」をお伝えするセミナー講師。
『どんな災害も乗り越える』
その心構えを”自衛隊式”でレクチャーしています。
このブログでは、防災のこと、身心の健康、そしてちょっとだけ自衛隊の話を綴っています。
自衛隊での経験やセラピストとして学んだことが、皆様のお役に立てば幸いです。
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公認心理師(国家資格)、産業カウンセラー、リラクゼーションセラピスト(2級)、元陸上自衛官、レンジャー隊員、上級体育指導官、予備自衛官(衛生官)
〔※「Windship」及び「Windship treatment」は登録商標です。〕
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