自衛隊卒のセラピスト

セラピスト&自衛官の経験と共に、笑顔になる話題をお届けします。

【平成25年伊豆大島土砂災害】町役場のインタビューで感じたこと

令和5年9月13日

平成25年(2013年)に起きた、伊豆大島土砂災害。実はわたしは、当時の被災地を現場視察で訪ねていたんです。当時の記憶を振り返りながら、町役場のインタビューで感じたことをお伝えします。是非ご覧ください。

お疲れ様です。自衛隊卒のセラピストの岡田 凰里(おかだ おうり)です。ブログを読んで頂いてありがとうございます。

 

9月も中旬に入りましたが、未だに暑い日が続いていますね。

 

夏が終わったな…とは、まだ思えませんよね(^^;

 

まだまだ熱中症には、油断禁物の様です(==;

 

熱中症の予防には水分の取り方、特に飲み込み方が重要です。

 

飲み込み方を間違えると、予防はおろか水中毒になって余計に体調が悪化します。

 

このブログの最後にブログを張り付けておきますので、是非ご覧ください。

 


さて、今月9月は防災月間です。

 

それに合わせて今月は、
『平成25年伊豆大島土砂災害』

 

をテーマにしています。

 

 

前回のブログでは昨年取材に行った、北海道胆振東部地震のブログ

「景観がもたらす心理的な影響」

 

をご覧いただきました。

 

地震から4年後の厚真町の状況

 

景観がもたらす心理的な影響

 

そして、本当の復興とは。

 

 

伊豆大島の土砂災害の取材をご紹介するにあたって、前置きをさせて頂きました。

 

お待たせいたしました。

 

今週のブログでは、インタビューに応じてくれた大島町役場の担当の方の話をご紹介しながら、10年前の土砂災害を振り返ります。


内容は以下の通りとなっています。

1 伊豆大島土砂災害とは

2 この災害でのわたしの体験

3 町役場でのインタビュー

4 インタビューで感じたこと

5 まとめと次回のテーマ

それでは始めていきますね。

 

 

1 伊豆大島土砂災害とは

平成25年伊豆大島土砂災害は、台風26号の大雨に伴い、2013年10月16日午前2時から3時にかけて発生した土砂災害です。

 

伊豆大島の元町地区上流の、大金沢を中心とした渓流において発生した、流木を伴った土石流が発生しました。

 

元町地区上流の大金沢地区

 

大島の元町では1時間に125㎜の猛烈な雨が降り、24時間降水量では824㎜を記録し、大島での観測史上1位の値を更新しました。

 

ちなみに、大島の10月1か月の平年降水量は329㎜。

 

一カ月に降る雨の、実に2.5倍の量の雨が一日に降ったことになります。

 

この尋常ではない降雨量による土石流の威力はすさまじく、次の様な被害が出ています。

 

死者    36名
行方不明者 3名

 

建物の全壊 137棟
大規模半壊 28棟
半壊    49棟
一部損壊  186棟

 

被災世帯数 179世帯
被災人数  324名

 

このような甚大な被害が出ました。

 

そして行方不明の3名は、未だに発見されていません。

 

このほかにもライフラインの被害、公共施設の被害、農林業への被害にも甚大な被害が出ました。

 

また、土石流が発生したのが、深夜の2時から3時にかけての真夜中だったため、状況の把握が非常に困難なものになりました。

 

災害発生後は、大島町役場の職員はもちろんのこと、地元消防団、警視庁、東京消防庁海上保安庁自衛隊による救助活動が行われています。

 

地元消防団の団員

 

警視庁の警察官

 

東京消防庁隊員

 

海上保安庁のダイバー

 

陸上自衛官

(※写真は参考資料1より引用 写真提供:気象庁東京消防庁・大島社会福祉協議会海上保安庁

 

 

災害発生の翌日から、11月8日までの23日間で、延べ約34,000人の人員が活動にあたっています。

 

なお自衛隊においては、統合任務部隊(JTF)が編制され、陸・海・空の自衛隊が統合的に運用されました。

 

実際にわたしの所属していた部隊の車両は、海上自衛隊のLCAC(エルキャック)という揚陸艇で大島に上陸しています。

 

 



そしてわたし自身は被災現地で活動することはありませんでしたが、偶然にも現地に赴くことになりました。

 

 

2 この災害でのわたしの体験

実はこの災害は、非常に印象に残っています。

 

なぜなら、とてもキツかったからです。

 

なぜキツかったかというと、ちょうど仕事が過密な時期に発生した災害だったからです。

 

 

その仕事とは国家的行事である自衛隊観閲式、そして引き続きの日米共同指揮所演習…。

 

 

災害派遣があるからと言って、すべての行事や訓練が延期や中止になるわけではありません。

 

延期・中止にできない場合もあるんです。

 

あの時は年末まで、寝る時間以外はずっと仕事をしているという日が続きました。

 

 

仕事をしていれば、誰しもこんな時はありますよね。

 

 

災害派遣伊豆大島だけに部隊が展開していたわけではなく、本土側にも部隊が展開していました。

 

本土に展開していた部隊、そして被災現地に展開している部隊の現地確認の一環で、被災地に足を踏み入れることになりました。

 

 

 

土砂災害の現場を見て感じたこと。

 

 

 

それは、

『このとんでもない規模の土砂崩れを、誰が予想できただろうか』

 

この一言に尽きます。

 

 

元町地区の土砂災害の現場に際して、わたしはしばらくの間、立ち尽くしたのを今でも覚えています。

 

山腹から襲った土砂

 

土砂の圧倒的破壊力

(※写真は参考資料1より引用 写真提供:気象庁

 

圧倒的な破壊力の土砂は、海岸まで至りました。

 

なすすべなく破壊された家屋には、唖然とするしかありませんでした。

 

わたしが居合わせた現場で、偶然犠牲者が発見され、敬礼で葬送しました。

 

 

そして被災していない地域では、いつもの時間が流れているように感じました。

 

 

このような状況を短時間に体験して、なんだか心の整理がうまくつかなかったのを覚えています。

 


帰路の際には、島民の方に自衛隊ありがとう」と書かれたプラカードを持って、手を振っていただきました。

 

 

災害派遣には携わることは何度もありましたが、このようなテレビの映像で流れるような場面を経験をするのは初めてでした。

 

 

「こちらこそ、ありがとうございます」

 

 

そんな風に思いながら手を振り返し、島を後にしました。

 

 

わたしの中でこの災害が印象に残っているのは、"キツかった”からだけでなく、1日の内に色々な体験をしたせいもあるのかもしれません。

 

 

当時はあまり考える余裕はありませんでしたが、気持ちの整理がつかず、心が追い付いていなかったような気がします。

 

 

あれから10年経った伊豆大島

 


現在の伊豆大島をこの目で見たいと思い、取材で再訪しました。

 


そして大島町役場の担当者の方が、インタビューに応じてくれました。

 

 

3 町役場でのインタビュー

大島町は、日本で起こり得るすべての災害に、対応しなければならないんです』

 

インタビューの最初に、防災担当の方から教わったことです。

 

日本で起こり得る災害とは、

 


地震

 

津波

 

風水害

 

土砂災害

 

火山災害

 


事前に伊豆大島について調べはしたんですが、改めて言われないと気が付くことができませんでした。

 

このすべての災害を想定しなければならない自治体は、なかなかないですよね。

 

 

大島は活火山の島です。

 

 

国内111座の活火山の内、約1割の12の活火山が伊豆諸島に属しています。

 

そして伊豆大島火山は、実際に1986年に噴火しています。

 

さらに天候でフェリーが離着岸する港が変わるなど、自然の力を身近に感じる土地です。

 

 

そんな中で災害に立ち向かっているのが、大島町役場の防災担当の方々です。

 

 

先月のブログでもお伝えしましたが、インタビュー前日に自転車で島を一周しました。

 

サイクリングを楽しむという目的もあったんですが、災害の爪痕が残っていないかを見て回る目的もあったんです。

 

わたしの見た限りでは、土砂崩れ後の茶色い土が見える山肌は確認できませんでした。

 

「土砂崩れが起きた部分の緑は、もう回復したんですね」

 

そうお伝えすると、

 

「いえ、実はあの土砂災害のままの山肌もあるんです」

 

「そうなんですか。10年経って自然の力では回復できていないんですか?」

 

「はい。緑が回復しているところは、人の手が入っているところです」

 

「都の事業で、島特有の成長の早い植物の種子を、ヘリで空中散布した地域もあります」

 

 

・・・。

 

 

わたしは10年あれば、自然の力である程度の緑は回復すると思っていました。

 

 

しかし、現実は違いました。

 

 

自然だけの力では、10年ほどの年月では緑を回復することが難しい。

 

 

緑を早く回復させるためには、人間の力が必要である。

 

 

そんなことを教えていただきました。

 


去年取材した北海道胆振東部地震では被災した、厚真(あつま)、安平(あびら)、むかわの3つの町で、土砂崩れなどで広範囲の森林が消失しています。

 

そして先日の9月6日で5年経ちましたが、植林などで再生したのは6%弱にとどまるとのことが、道のまとめで明らかになっています。

 

森林の再生というのは、とても長い道のりのようです。

 

それでも実際に大島に赴いて、観光客目線で見て茶色い山肌が見えないのは、地元の方や都の職員、そして町役場の方が地道に災害に向き合ってきた証だと思います。

 

そしてインタビューの中で、最も強くおっしゃっていたのが、

 

「災害に際して、”心構え”が非常に大切です」

 

「心構えをしておくことを、皆さんに伝えて欲しい」

 

自然との距離が近く、日本で起こり得るすべての災害に対応しなければならない町役場の方のこの言葉は、とても重く感じました。

 

この町役場の担当者の方の想いを、わたしなりに読み解いてみました。

 

 

4 インタビューで感じたこと

町役場でのインタビューは、月曜日に伺いました。

 

わたしが島に着いたのは土曜日の朝で、その間に飲食店などで地元の方と話す機会がありました。

 

そこで感じたのは、島民の方は自然に対する感覚が、本土の人間とは少し違うことです。

 

自然が身近で、自然への畏怖の念が強い。

 

会話の端々から、そんな印象を受けました。

 

確かに目の前に活火山と海があって、雨風で船の発着港が変わる環境です。

 

そうなるのも当たり前と言えば、当たり前です。

 

 

そういう環境で生活されている方が、

心構えが大切である

 

そうおっしゃっているわけです。

 

 

 

「災害に備えて、心構えをする」

 

 

 

そんなことを積極的にやりたい人は、いないと思うんです。

 

できれば、災害になんて遭遇したくないわけですから。

 

こうなると心構えをしておくことから、どうしても目を背けたくなってしまいますよね。

 

 

これは誰もが一緒だと思います。

 

 

「ただその心構えがないと、いざという時の行動に大きな影響を与えてしまう」

 

これは元自衛官のわたし自身、経験していることです。

 

そして、町役場の方もそれを経験しているからこそ、”心構え”という言葉が出てきたんだと思います。

 

 

 

心構えがないと、行動ができないんです

 

 

 

避難を呼びかけた際、避難する方もいればしない方もいます。

 

避難するって、大変なことですからね。

 

それでは避難する方としない方の違いは何か…。

 

 

恐らくそこに、”心構えの差”があるんだと思います。

 

 

科学技術の発展で、雨風の予測の精度は上がっています。

 

それでも、完璧に予測できるわけではありません。

 

 

つまり、自然災害を正確に予測することは、現代科学では不可能なんです

 

 

だからといって、予測技術や災害の対策の歩みは、止まっているわけではありません。

 

 

着実に、一歩一歩進んでいると思います。

 

 

ただ、そこには限界があることを忘れないでください。

 

 

人間の予測を超える災害は、必ず起きます。

 

 

そして、いざという時に生死を分けるのは、”心構えの有無”ということが間々あります。

 

 

今月は防災月間です。

 

 

是非この機会に、被災した時の”心構え”があるかどうかを、胸の内に尋ねていただければと思います。

 

 

5 まとめと次回のテーマ

今回のブログでは、大島町役場でのインタビューと、その内容を通して災害に対する”心構え”についてお伝えしました。

 

 

心構えがないと行動できないこと。

 

災害の予測には限界があること。

 

心構えの有無が生死を分ける場合があること。

 

 

そんなことをお伝えしました。


今回のブログを読んで、心構えをしてみよう!と感じた方は、まずはお住まいの自治体の「防災の手引き」をご覧ください。

 

地域の特性に合わせた、準備や避難の要領が記載されています。

 

現代は情報化社会で、ネットで検索すれば、色々な情報がヒットします。

 

もちろんそちらを参考にしてもいいんですが、初めの一歩は自治体のものです。

 

わたし自身も、住んでいる自治体のものを参考に、災害準備をしています。

 

是非一度、目を通していただければと思います。

 


次回のブログでは、被災10年後の現地の様子を、写真と共にお伝えします。

 

是非ご覧ください。

 

参考資料
1 平成25年伊豆大島土砂災害記録誌(PDF) 平成29年3月 東京都伊豆大島町防災対策室編著 
2 気象庁HP

 

参考文献
1 伊豆諸島の自然と災害 鈴木毅彦・市古太郎編著 古今書院 2023年3月

 

※令和6年2月28日:ブログの冒頭に「概要」を追加し、内容を校正しました。

 

 

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陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。公認心理師産業カウンセラー

 

在職時は、年200件以上の面談に対応するカウンセラーの任務を行うと共に、隊員に対して災害派遣の心構え」を教育をしていました。

 

そんな自衛隊での教育や、自身の災害派遣の経験をアレンジして、現在は一般向けに「災害の心構え」をお伝えするセミナー講師。

 

 

『どんな災害も乗り越える』

 

その心構えを”自衛隊式”でレクチャーしています。

 

 

このブログでは、防災のこと、身心の健康、そしてちょっとだけ自衛隊の話を綴っています。

 

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経歴・資格など
ラクゼーションセラピスト(2級)、公認心理師(国家資格)、産業カウンセラー、元陸上自衛官、レンジャー隊員、上級体育指導官、予備自衛官(衛生官)

〔※「Windship」及び「Windship treatment」は登録商標です。〕