自衛隊卒のセラピスト

セラピスト&自衛官の経験と共に、笑顔になる話題をお届けします。

【銃と爆発物から命を守る③】爆発物の対処法とその限界

令和5年12月20日

起きてしまうと被害が大きくなってしまう、爆発物による事件。対処法はあるんですが、どうしても限界があります。未然に事件を防いでくださっている皆様に、感謝を捧げます。是非ご覧ください。

お疲れ様です。自衛隊卒のセラピストの岡田 凰里(おかだ おうり)です。ブログを読んで頂いてありがとうございます。

 

12月もいよいよ下旬。

 

今年も残すところ、10日ほどになりました。

 

なんだか寒暖の差が、例年になく激しい冬になりましたね(^^;

 

気温の変化についていくのは大変ですが、体調には注意して過ごしていきましょう。

 

 

さて、前回のブログでは銃に関する事件に遭遇した際の、対処法についてお伝えしました。

 

「射線から外れて離脱する」

 

これが大切でしたね。

 

そして、離脱が難しい時の対処法についてもお伝えしました。

 

詳しい内容は前回のブログをご覧ください。

 

このブログの最後にリンクがあります。

 

 

さて、今週のブログでは爆発物の対処法についてお伝えします。

 

 

ところで、皆さん。

 

先日、東京都世田谷区の成城学園前駅で、鉄パイプ爆弾の騒ぎがあったのをご存じですか?

 

警察の方の職務質問から、犯行前の逮捕につながったそうです。

 

結局はナイフを所持していたのみで、鉄パイプ爆弾は起爆装置のついていない、火薬入りの鉄パイプを所持していただけだったようです。

 

個人的な恨みから、凶器のナイフと爆発物を所持していたようです。

 

ブログを始める前に、まずは安心安全を守ってくださった、警察の方に感謝したいと思います。

 

 

ありがとうございます。

 

 

警察の方が危険を事前に察知して、被害者が出る前に犯行を未然に防いでくださいました。

 

地道な職務質問が、防犯につながった一例ですね。

 

 

本当にありがとうございます。

 

 

そして今回のように「未然に防止する」という方法を取らなければ、爆発物に対処するのはとても難しいんです。

 

 

今回のブログの題は

『爆発物の対処法とその限界』

 

 

なぜこのような題にしたのか、詳しく説明していきます。

 

ブログは以下の内容です。

1 なぜ爆発物を使うのか

2 爆発物の特性と対処法

3 対処には明確に限界がある

4 恐れず怯えず感謝の気持ちで

5 まとめと次回のテーマ

 

それでは始めていきますね。

 

 

1 なぜ爆発物を使うのか

「爆発物」

 

つまり火薬を、日常生活で使うことはまずありません。

 

一般の方が触れるのは、夏の風物詩の花火くらいですよね。

 

専門の方になると、ビルの爆破解体やトンネル工事での岩盤の爆破で使用する機会があります。

 

そしてわたしのように自衛隊で訓練を受けている人間は、その任務に応じた爆薬を使用します。

 

これらの場合はしっかりとした目的があって、法律の定めに基づいて使用が許可されています。

 

それでは犯罪を企てる人間は、なぜ爆発物を使うのでしょうか。

 

先日の成城学園の事件のように、個人的な恨みを晴らすために爆発物を使うことはほとんどありません。

 

大抵の場合は、自分たちの意見を主張するための手段として使われます。

 

そして被害者を多くだし、恐怖によってその主張を通そうとするものです。

 

 

そうです。

 

 

爆弾テロです。

 

 

標的が、ある特定の組織である場合もあれば、無差別に行われる場合もあります。

 

こんなことに巻き込まれることは滅多にありませんが、実際に起きている事件です。

 

そんな現実に対して、対処法を全く知らないわけにはいかないと思うんです。

 

それでは早速ではありますが、爆発物の特性と対処法を説明していきますね。

 

 

2 爆発物の特性と対処法

さて、爆発物の特性をお伝えする前に、わたしの爆破経験を少しご紹介しておこうと思います。

 

自衛隊で爆破を行う職種は、大きく分けると2種類あります。

 

それは施設科と武器科です。

 

施設科は昔で言う工兵のことです。

 

施設科の爆破は、「破壊」がメインです。

 

任務を行う上で妨げになるものを、爆薬で破壊するという感じですね。

 

普通科の施設作業小隊も、このような任務を行います。

 

そして武器科は、名前の通り武器の整備や弾薬の管理を行う職種です。

 

その中に「不発弾処理」という任務があります。

 

たまに戦時中の不発弾が見つかって、自衛隊が対処しているというニュースが流れますよね。

 

あの命懸けの対処をしているのは、武器科の不発弾処理隊の皆様です。

 

不発弾が持ち運びができない状態の時には、その場で爆破して処理します。

 

 

そしてわたし自身は、施設科の「破壊」武器科の「不発弾処理」、両方の訓練を受けています。

 

実際にTNTやC4などを使って爆破の経験があります。

 

そんな経験にもとづいて、爆発物の特性と対処法をお伝えしていきますね。

 

 

まずは特性です。

 

 

爆発物が爆発して人間に被害を与える要素は、大きく3つです。

 

それは、

 

「破片」

 

「爆風」

 

「衝撃波」

 

になります。

 


「破片」は、爆薬が破裂した時に飛び散る破片ですね。

 

手りゅう弾なんかは、その破片で被害を大きくするような構造になっています。

 

 

次に「爆風」は、爆薬が破裂した勢いで起きる風です。

 

その風に吹き飛ばされて、被害を受けるというものです。

 

 

最後に「衝撃波」は、爆薬が爆発した時に発生する”疎密波”です。

 

その疎密波が、身体の内部にまで被害を及ぼすというものです。

 

 

ただ爆風衝撃波は、爆薬の近くにいたり、火薬量が相当多くないと被害が発生しません。

 


ですので、基本的には「破片」に対処することになります。

 


破片に対処するためには、その飛び散り方を知っておく必要があります。

 


実は爆発物の破片というのは、上方向には飛びやすいんですが、地面と水平方向には飛びにくいんです。

 

 

この飛び散り方の特性を知っていれば、対策はおのずとわかりますよね。

 

 

そうです。

 

 

それは『地面に伏せる』ことです。

 

 

仮に岸田首相の襲撃事件のような、目の前に今にも爆発しそうだと思われるものがあった場合、とにかく素早く伏せることです。

 

 

ただ群衆の中だと、地面に伏せるのは難しい場合があります。

 

 

その場合はダンゴムシのポーズをとってください。

 

 

爆発物に背を向けるようにしてこのポーズをとります。

 

 

このダンゴムシのポーズは、災害に遭遇した際に身を守るためのポーズです。

 

 

爆発物に遭遇した際にも、このポーズをとることで、命が危険にさらされる確率を下げることができます。

 

 

そして、先日の岸田首相の事件に使われた程度の大きさの爆発物であれば、体育の授業で使う体操マットを上にかければ、破片による被害を防ぐことができます。

 

 

もし、そういったものが近くにあった際には、利用するのもいいかもしれません。

 

 

 

 

ただ…。

 

 

 

 

ダンゴムシのポーズをとった所で、すぐそばで爆発したら被害を受けるでしょ!?」

 

 

 

 

そんな風に感じますよね。

 

 

おっしゃる通りなんです。

 

 

爆発物に対処するのには、どうやっても限界があるんです。

 

 

3 対処には明確に限界がある

表題にもしているのに、しつこいと感じるかもしれませんが、あえて繰り返しお伝えします。

 

 

爆発物の対処には明確に限界があります。

 

 

なぜか。

 

 

それは爆発物は、見つからないように隠して仕掛けられるからです。

 

 

つまり仕掛けられてしまうと、気づく前に爆発してしまう可能性が高いということです。

 

 

前回のブログでお伝えしたように、銃の場合には「構える」「狙う」「撃つ」という動作が必要なので、間隙が生まれて対処行動をとることが可能です。

 

しかし、爆発物の場合には威力が大きいので、見つからないように仕掛けられてしまうと、もう対処の使用がありません。

 

つまり爆発物に対処するには、未然に犯行を発見し、爆発物を仕掛けさせないという方法をとるしかないんです。

 

 

そのために警察官をはじめとする公安職の方が、警戒の目を光らせてくれています。

 

 

そして、岸田首相襲撃事件のようなに、わかりやすく爆発物本体がさらされることはまずありません。

 

 

そんな中で、SPの方はとっさの判断であの不審物を蹴り飛ばして、首相はもちろん一般の方を守ってくださいました。

 

 

恐らくSPの方が気づかなければ、

 

「なにこれ?」

 

と、不思議そうに見ている間に爆発していたと思います。

 

 

訓練を受けている方とそうでない方の差は、あのようなとっさの時に出るものです。

 

 

さすがはSPだと感じました。

 

 

事件があった当時、メディアを拝見していましたが、中にはSPの対応に対して

 

 

「蹴ったりして危ない」

 

「怪我をした人がいる」

 

「本当にあの対処でよかったのか」

 

 

そんな意見を伺うことがありました。

 


もちろんおっしゃる通り、検証の余地は、もしかしたらあるのかもしれません。

 


ただ、実際に爆破の経験者のわたしからすると…。

 

 

あれ以上の対処をしろということは、

 

 

「爆発物に覆いかぶさって、自分の命を犠牲にしろ」

 

 

そう言っているのに等しいことだと感じます。

 

そんなことを伝えるより、とっさの判断であの場にあれだけ集まっていた方々を守ってくださったことに、感謝の言葉を捧げませんか?

 

 

4 恐れず怯えず感謝の気持ちで

「対処に限界がある」

 

そんな風にお伝えすると、不安に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 

「爆発物がどこに仕掛けられているかわからない」

 

そんな風に考えて、怯えてしまうという方もいらっしゃるかもしれません。

 

もちろんこんなことは絶対にない、とは言い切れません。

 

 

ただ、ほとんどないことなんです。

 

 

このブログは、本当に万が一のことに遭遇した際のことをお伝えしています。

 

 

対処法を知っているかどうかで、とっさの行動がどうしても違ってくるからです。

 

 

そして、爆発物に関する事件がほとんど起こらないのは、

 

「取り締まる法律を作ってくださった方」

 

「爆発物に関する犯罪を取り締まっている方」

 

「いざ発生した際に対処してくださる方」

 

そんな皆様のお陰です。

 

 

安心安全な日常を守るためにお仕事をされている皆様に、心から感謝致します。

 

 

ありがとうございます。

 

 

そしてその日常を守るためにわたし達ができることは…

 

 

「自分はやらないこと」

 

 

それに尽きます。

 

 

わたし達が気づかないところで、安全安心を守っている皆様に感謝の気持ちを捧げながら、何気なく過ぎていく日常を存分に楽しみましょう。

 

 

5 まとめと次回のテーマ

今回のブログでは、爆発物に関する事件に遭遇した際の対処法をご紹介しました。

 

ダンゴムシのポーズでしたね。

 

特別な訓練をしていなくても、誰でもできる方法です。

 

一度やっておけば十分なので、是非やってみて下さい。

 

そして爆発物の対処には限界があることもお伝えしましたが、このような事件に巻き込まれることは、日本ではまずありません。

 

事件のことは気にせず、感謝を忘れずに、日常をエンジョイしていただければと思います。

 

 

関連ブログ

 

参考資料
1 Yahooニュース 「鉄パイプ爆弾所持か「女性殺して自分も死ぬ」 成城学園前駅前でナイフ所持容疑の男逮捕 警視庁(産経新聞)

2 ウィキペディアHP 「岸田首相襲撃事件」「日本で発生した爆発事件・事故

 

参考文献

1 武器と爆薬 小林源文著 大日本絵画 2007年5月
2 爆発の仕組みを科学する 齋藤勝裕著 C&R研究所 2016年2月
3 日本版 民間防衛 濱口和久・江崎道朗・坂東忠信著 青林堂 2018年8月
4 民間人のための戦場行動マニュアル (株)S&T OUTCOMES・川口拓著 誠文堂新光社 2019年6月
5 火薬の話 松永猛裕著 講談社 2014年8月
6 テロ爆弾の系譜 木村哲人著 第三書館 2005年7月

 

※令和6年2月26日:ブログの冒頭に「概要」を追加し、内容を校正しました。

 

 

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陸上自衛隊に15年勤務。レンジャー隊員。公認心理師産業カウンセラー

 

在職時は、年200件以上の面談に対応するカウンセラーの任務を行うと共に、隊員に対して災害派遣の心構え」を教育をしていました。

 

そんな自衛隊での教育や、自身の災害派遣の経験をアレンジして、現在は一般向けに「災害の心構え」をお伝えするセミナー講師。

 

 

『どんな災害も乗り越える』

 

その心構えを”自衛隊式”で学べるセミナーを提供しています。

 

 

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ラクゼーションセラピスト(2級)、公認心理師(国家資格)、産業カウンセラー、元陸上自衛官、レンジャー隊員、上級体育指導官、予備自衛官(衛生官)

〔※「Windship」及び「Windship treatment」は登録商標です。〕